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Sopron 19. 08. 1989 - 2009

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8月末、ハンガリーのショプロンに日帰りで行ってきました。
ウィーンから列車で50分程度。

ハンガリー領土の中で、このショプロンだけがオーストリアのブルゲンランド州に突き出したようになっていて、ドイツ語もユーロも使えて、物価も安いので、オーストリア人もよく買い出しに行ったりします。

起源は14世紀、王様も住んでいたという(?)歴史の古い街。

列車を降りて、ぶらぶらと10分ほど。
城壁に囲まれた旧市街が現われます。

ショプロンに興味をもったのは、もともとは「汎ヨーロッパ・ピクニック」を
知ったのがきっかけ。

今年は11月9日のベルリンの壁崩壊20周年が話題になりましたが、そのベルリンの壁崩壊のきっかけとなったのは、約3ヶ月前の1989年8月19日、このショプロンで起きた政治集会「汎ヨーロッパ・ピクニック」であると
言われています。

1980年代、民主化への模索をはじめた東欧諸国に対し、依然として締め付けが厳しかった東ドイツ。
そんな中、1989年5月、ハンガリーとオーストリアに国交が成立。
これが東ドイツの住民に、大きな期待を抱かせることになったそうです。

東側であるハンガリーまでは、合法的に国境を越えられる。
ハンガリーまで辿り着けば、何とかオーストリアへ脱出し、そこから西ドイツへ行けるのではないか、と多くの東ドイツ住民が考え、「ハンガリーへピクニックへ行こう」を合言葉に、旅行許可証をもってハンガリーへ向かう人が続々と増え始めた。

そして1989年8月19日、オーストリアに食い込むような立地ゆえ、もっともオーストリアに脱出できる可能性が高いとされたショプロンにて、政治集会が開かれる。

「この集会に参加すれば国境を越えられる」という噂は口コミで広がって、およそ1000人の東ドイツ人が詰めかけたそうです。

実際の規定では、ハンガリーとオーストリアの国境を越えられるのは、ハンガリーのパスポートを持った人のみ。
しかし、集会が始まるやいなや、参加者たちは続々と国境を越えはじめる。

その国境の様子が、ショプロンに残されています。
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実はハンガリーとオーストリアの内務省は、事前に内密に打ち合わせ、予め国境ゲートのひとつを開放、国境警備隊にも事態の黙認と武装禁止を命じていたそうです。

このピクニック成功のニュースは、瞬く間に東ドイツ中へ広がり、一層多くの東ドイツ人がハンガリーやチェコスロヴァキアのオーストリア国境付近へ詰めかける事態へ発展。それに付随して民主化への気運が高まりデモが頻発。
このエネルギーが、結果的に11月のベルリンの壁崩壊へと繋がっていったと言われています。
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オーストリアとハンガリーでは、毎年8月20日は、このピクニック事件を記念する祝日となっていて、オーストリアでもメディアが大きく取り上げる。

私がこの事件について知ったのは、ウィーンへ行ってから。
7カ国に囲まれた「中欧」に位置するオーストリアの特殊さを実感するのは、
ひとつにはこういう部分でもあります。
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これは今年の8月19日の、オーストリアの新聞に取り上げられた、この事件の記事。
当時の国境に立てられた看板の写真です。

「あなたたちは、オーストリアにいる。
 もう危険はありません!
 私たちが助けます!」

ウィーンのカフェでこの新聞を読んで、何だかこの言葉に見入ってしまった。
私なんかが、どれほど想像を巡らしたところで、当事者の人々の気持ちも、その国々の状況も、本当に理解することはできるはずがありません。

けれど、ふとしたときに、そういう歴史や人々の気持ちへ思いを馳せることができるのは、うまく説明はできないけれど、大事なことではないかなと思うのです。

# by imabendrot | 2009-11-11 20:28

St. Anton 3

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ペンションの朝ごはん。

私はこの典型的なオーストリアの朝ごはんが大好き。
これにコーヒーがつきます。

「ゼンメル」と呼ばれる丸パンは、オーストリアでもっともポピュラーで、
誰もが食べる日常的なパンだけれど、本当に本当に美味しいです。

これがオーストリアから一歩出た途端、不思議となかなか出会えない。
日本にいる時にいつも恋しいのは、まずこのゼンメル。
これはオーストリア在住経験のある人は、口を揃えて言っているような。

南ドイツや東欧近辺にも一応同じ「ゼンメル」の名のついたものはあるの
だけれど、なぜか味わいは全然違います。
日本でも、たまにドイツ・パンを謳っているパン屋さんにあったりしますが、
残念ながら、あれも別もの。

なので私はオーストリアにいるときは、まずゼンメルです。
これにエクストラ・ヴルストというスライスしたハムを挟むのが
「オーストリアの庶民の味」なのだそうで、これは病み付きに。

昔、まだ特にオーストリアに興味もなかった頃に読んだ本で、誰かが
「フランスのパンやドイツのパンは有名だけれど、実はオーストリアのパンが、
世界で一番美味しいと思う」
と書いていたのを読んだことがあります。

その理由をいろいろ書いてあったのですが、いま思い返してひとつ納得
するのは、やはり水の美味しさと、素材の良さ。生産行程の丁寧さ。

国中で水道水が安心して飲める、というのはいまやひとつの美徳だと
思うし、わざわざ「ビオ」や「オーガニック」と銘打たなくても、そもそも
オーストリアのものは、当たり前のように自然栽培の理念に基づいています。

ワインをはじめ、ほとんどすべてがそうですね。
他国の商品では、あらためて「ビオ製品」「自然栽培」と謳って
売られているものが多いけれど、オーストリアでは、90%以上の生産者が、
ビオディナミと呼ばれる、シュタイナー理念に基づいた自然農法団体に
加盟していて、もうずっと昔から自然栽培が当然です。

生産量はそれほど多くないので、ほとんどすべて自国で消費され、
日本ではそれほど知名度は高くないですが、プロダクトの質が、
あのオーストリアの豊かな自然と気質に、見事に比例しているんだな、と
しみじみと思います。

もちろん私はフランスのバゲットやクロワッサンも好きだし、スイスでも
パンは美味しかったから、何が美味しいかは個人の好みによると思うのだけれど、
ゼンメルに関しては、たしかにオーストリアが世界一美味しい、と断言したい!

ウィーンで8年過ごして帰国した友人などは、ウィーンに行くたびに、
空港のスーパーでゼンメル「全買い」、オーストリア産の岩塩も「全買い」(笑)

今回は、ザルツカンマーグートも含めて、オーストリアにたくさん旅行したので、
この「オーストリアの朝ごはん」をたくさん食べられて満足でした。
# by imabendrot | 2009-11-07 00:28 | Österreich

St. Anton 2

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「山もいいけど、川沿いの道を歩くのもきれいよ」

というインフォメーションのお姉さんのおすすめに従って、
St. Anton 2日目は、村の裏側にある川の道へ。

村でマウンテンバイクをレンタル。
名前と泊まっているペンションの名前を書くだけで、証明書も見せず、
料金も後払い。時間も適当なので、前日の夕方から一晩借りっ放し。
しかも、鍵もないし。

思わず「いいの?」と聞くと、不思議そうに、
「だって、別に誰も盗まないし、必要ないでしょ」・・・らしい。
基本、田舎のひとは性善説で生きてますよね。

そういえば、宿も決めずに行ってしまった私たちは、着いてから
「Ruhetag(休み)」の札のかかる、営業外だったペンションのドアを
気付かずに叩き、そのまま泊めてもらったのでした(笑)
「別にいいよ〜」という感じで、私たち2人だけのために、バルコニー付きの
部屋を用意してくれたり、ワインを冷やしてくれたり、朝ご飯を作ってくれたり。
・・・ほんと、みんな良い人ばかりです。

さて、川に沿って行くと湖がある、と聞いて、いざ出発。
・・・そして、途中で嬉しい発見!!!
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Jakobsweg - サンティアゴ・デ・コンポステーラに通じるスペイン巡礼路。
ここは何と、カミーノの道だったのですね。
こんなところからも通じているんだなあ・・・と何だか感慨深い。
そして嬉しい。

険しい路になってきたので、途中からはマウンテンバイクを置いて歩くことに。
この道は本当に美しく、川の音が心地良く、まさにカミーノを歩いた時間を
思い出した。

1時間半くらい歩くと、湖に到着。
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この水の透明度。自然の力って、本当にすごいと思う。
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・・・おつかれさまです。
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# by imabendrot | 2009-11-07 00:26 | Österreich

St. Anton

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来ました、チロルのアルプス。

こうなると、もう言葉はいらない。
すごい、きれい、すごーーーい!!!
・・・・という陳腐な表現しかできない自分が、やや悲しい(笑)
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標高2811メートルのヴァルーガ山頂。岩肌が剥き出しになった山の荒々しさ。

足場のほとんどない崖みたいな斜面を、ロープを伝って降りる。
これはかなり怖いのですが、その横を、雪の残った部分をスキーで滑って
降りていく人がいるんだから、唖然。
さすがスキー王国の人々は違いますね。。。
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岩肌がなくなると、そこは「アルプスの少女ハイジ」の世界そのもの。

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やっぱり、オーストリアの田舎は最高。大好きです。
チロル地方の州都、インスブルックだったら住んでもいいかも。
夏は山、冬はスキー。
大学もあってアカデミックでもあるし、ザルツブルクにも近いし、
人も優しくてのーんびり。

思わず本気でそんなことを考えてしまうくらい、素敵なところ。
私は、知れば知るほど、オーストリアを本当に好きになる。
# by imabendrot | 2009-11-07 00:25 | Österreich

Innsbruck - St. Anton

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オーストリアの一番西、チロル地方。
オーストリア・アルプスの雄大な自然が広がるここは、アルペン・スキー発祥の地。

そんなわけで、冬は完全にスキー・リゾート。
夏はハイキング客で賑わいます。

ウィーンから飛行機で約30分強、インスブルックの空港が見えてきたとき、
思わず歓声をあげてしまった。

壮大なアルプスの山々が、間近に迫る。
その美しく切り立った白い峰の凛々しさ、青い空とのコントラストが、爽やかに
澄み切っていて、思わず吸い寄せられる。

そんなアルプス山脈の山間に、ちょこんと小さくたたずむ、インスブルック空港。

世界各国を旅して回る友人が、
「インスブルックの空港が、世界で一番好き」と言っていた意味が、よく分かる。

これほどまでに美しい空港には、滅多に出会えない、と思う。

スロヴェニアのリュブリャナ空港も山に囲まれてきれいだったけれど、
ここまで迫ってくるような迫力と美しさは感じなかった。

しかも、飛行機から到着・搭乗ゲートまで、徒歩。
これだけ小さな飛行場ならではの話だと思うけれど、乗客10数人とクルーが、
共に飛行場をちょこちょこ歩いてゲートに向かう姿に、思わず笑ってしまいます。
おかげで滑走路のど真ん中で、堂々とアルプスに対面できる。
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まるで観光バスみたいに、街の中をぐるりと回る市内バスにのって中央駅に着くと、
そこから列車で1時間半。
オーストリア屈指のスキー・リゾートのひとつ、ザンクト・アントンへ到着です。
(続く)
# by imabendrot | 2009-11-07 00:24 | Österreich